2000年9月の Favorite !! は秋のおすすめ図書海外文庫編
9月に入り、夏の暑さの中にも秋らしい気配が感じられるようになりましたね。 ****** 目次 ****** 『ライ麦畑でつかまえて』 J.D.サリンジャー著 野崎 孝=訳(白水ブックス) 『グリーン・マイル』 スティーヴン・キング著 白石 朗=訳(新潮文庫) 『アルジャーノンに花束を』 ダニエル・キイス著 小尾 芙佐=訳(早川書房)
本屋さんではこの本に「永遠の青春小説」というような見出しがついていましたが、これがはたして青春小説なのかどうか、私には判断しかねます。が、この本はすごい本です。なにがすごいって、まず訳がすごいです。海外図書は訳によって与えられる印象が大分かわってしまうと思いますが、この小説をこれ以上の訳で出版することはできないでしょう。なぜなら、それくらい強烈な印象でこの文章は頭の中に入り込んでくるからです。
訳がすばらしいと先に述べましたが、内容あっての訳ということですから、もちろん内容もすばらしい。こんなに皮肉でご機嫌で抱腹絶倒の小説は読んだことがないくらいと言ってもいいほどです。何度読み替えしてもその軽妙な語り口にあっという間にひきこまれてしまいます。
ジョン・レノンを殺害したマーク・デビッド・チャップマンは犯行時にこの『ライ麦畑でつかまえて』を所持していたとか。そしてその本にはなぜかサリンジャーでなくスティーブン・キングのサインがしるしてあったということです。なにか意味深いものを感じますね。
少し前に映画化された物語です。個人的には昔から「原作を読んだら映画を見ない、映画を見たら原作を読まない」と決めているのですが、なぜかというとだいたいは先に観たり読んだりした方のイメージが強すぎて、後から見た方にがっかりしてしまうからです。また、原作と映画では細部が微妙に違っていたりするし、イメージする人物像と俳優さんがしっくりこないことも多いです。
スティーヴン・キングは言わずと知れたアメリカのホラー小説作家です。その作品の多くが映画化されているので御存じの方も多いことでしょう。
恐怖と奇跡と感動の入りまじったすばらしい作品です。
この不朽の名作はもうすでに読まれたという方も多いのではないでしょうか。最近では文庫化されて、さらに読みやすくなりました。
精神薄弱という障害をもっている主人公のチャーリーに実験的脳外科手術をほどこし、だんだんと天才になっていくのですが、そんな彼の目がとらえた現実の世界とはどんなものだったのでしょうか。
悲しく美しいこの小説は、きっとこれからもずっと名作として残ることでしょう。
私はあまり本をたくさん読む方ではありません。また、読んでいても途中で挫折してしまう本も多いのです。 しかし、今回ご紹介した本はどれもみな読みやすく、ついつい時間も忘れて読んでしまうくらいにすばらしい内容のものばかりです。 9 月の『Favorite !!』を読んで、これらの小説に興味を持ってくださったらとてもうれしい限りです。 |